コラム・活動レポート

株式会社サウンドテラスが主催する「バトンパスコンサート」は、若手音楽家の挑戦を応援し、次の世代へ音楽のバトンをつないでいくことを目的とした取り組みです。クラシック音楽の世界では、演奏機会の獲得が大きな壁となることが少なくありません。特に若い音楽家にとっては、練習と研鑽を積んでも、実際に舞台に立ち、聴衆の前で表現する機会を得ることが容易ではない現実があります。バトンパスコンサートは、才能ある若い演奏家にその重要な一歩を踏み出す舞台を提供し、その挑戦を温かく後押しする貴重な場として多くの支持を集めています。

私たちは、この趣旨に深く共感し、本コンサートへの協賛を通じて若い音楽家の未来を応援しています。舞台での経験は、演奏技術はもちろん、表現者としての自信や覚悟を育てる大切な時間です。演奏を受け取る観客にとっても、若い音楽家が魂を込めて音を紡いでいく姿に触れることは、文化的な豊かさを共有するかけがえのない体験となります。

音楽を介した若い挑戦者の育成をさらに広い枠組みで支援できないかと考え、会場ではTobira Cafe（トビラカフェ）のフェアトレードコーヒーを配布しています。Tobira Cafe は、若い女性社会起業家である山田果凜さんが立ち上げたフェアトレードブランドで、生産者に正当な対価が支払われる仕組みづくりや、環境に配慮した循環型の取り組み、売上の一部を現地で病気で入院するこどもたちの支援につなげています。コーヒーという日常的な飲み物の背景にある社会課題に光を当てながら、小さな一杯を通じてより良い社会をつくる志を持つ若い起業家の挑戦を象徴するブランドでもあります。

このフェアトレードコーヒーをコンサート会場で配布することにより、私たちは「若手音楽家の挑戦」と「若手社会起業家の挑戦」を同じ場で応援する新しい形を生み出しました。音楽家から音楽家へとバトンがつながれるのと同時に、

音楽家 → 来場者 → 社会起業家 という、もうひとつのバトンパスが生まれていきます。

若い音楽家が舞台で表現を届け、その音を受け取った来場者がTobira Cafeの想いに触れ、さらに若い社会起業家の挑戦を支える。この多層的な循環は、文化と社会、表現と共感、挑戦と応援が混ざり合いながら広がっていく“価値のバトン”そのものです。単なる協賛活動にとどまらず、音楽と社会課題解決が同じステージ上で響き合う、新しい支援の形を提示するものになったと考えています。

これからの時代、若い才能がどの分野でも挑戦し続けられる環境をつくることがますます重要になっていきます。芸術家も、社会起業家も、未来をつくる存在であることに変わりはありません。それぞれのフィールドで努力を重ねる若い世代の挑戦に光を当て、観客や社会全体がその挑戦をともに支えられる仕組みを育てていくことが、私たちの願いです。

バトンパスコンサートを起点に、音楽家の挑戦と社会起業家の挑戦が結びつく小さな循環が生まれました。この“バトンパスの輪”を、今後もより大きく、温かく広げていきたいと考えています。音楽の力と、志ある人々の取り組みが交差するこの場から、未来への希望が確かに芽生えています。