250916 障害者施策セミナー(バリアフリーカンパニー)に参画
2025年12月23日 14:31
2025年9月16日、麻布台ヒルズ・ヒルズハウスにて、バリアフリーカンパニー(BFC)が、森ビル株式会社(オフィス事業部)と共同にて、企業の人事・経営企画部門の皆さまを対象としたセミナー
「企業における障害者施策のポイント 障害者差別解消法・障害者雇用促進法の論理と実例」
を開催しました。
今回、私はBFCフェローとして、組織・人材開発の立場から企画・運営の支援とディスカッションに参加しました。
法制度の名称は広く知られるようになった一方、実務としての制度構築やコミュニケーションの在り方については、依然として多くの企業が試行錯誤を続けています。そこで今回は、法律・企業事例・当事者視点・経営視点を横断する実践型の学びの場を企画しました。
■ バリアフリーの進化と企業が求められる視点
オープニングでは、似内フェローよりバリアフリー概念の変遷が紹介されました。
障害や高齢といった特定の対象に配慮する段階から、すべての人にとって利用しやすいユニバーサルデザインへ、そして今日では、多様な個性を尊重し、それぞれの強みを最大限に生かす社会設計へと進化しているという捉え方です。
この「バリアフリー3.0」の視点は、SCMが追求する人的資本を中心とする組織づくりとも重なります。より多様な個性を戦略的に活かすという点で、企業価値向上の観点からも極めて重要なテーマであると確認しました。
■ 当事者視点から見た日本の現状
続いて中澤代表より、ご自身の経験をもとに日本におけるバリアフリーの課題が語られました。
日本では理念型の法制度が中心で、民間企業での実装や社会の理解が十分でない場面が多いこと。また、障害を「できない側面」ではなく、「個性と能力」としてどう理解するかという文化の転換が重要であることが示されました。
「障害は個人にあるのではなく、社会の側にあることも多い」という社会モデルの視点が、参加者の意識にも訴えかけるものになりました。
■ 法的視点:合理的配慮と建設的対話
続いて、関哉弁護士から法的な整理と実務対応のポイントが解説されました。
障害者差別解消法における「不当な差別的取り扱い」と「合理的配慮の不提供」という二つの観点、そして「過重な負担」の判断における企業の姿勢が焦点となりました。
特に印象深かったのは、「建設的対話」を続ける姿勢こそが、法対応とトラブル防止の最も重要な鍵であるという点です。たとえすべての要求に応じられなくとも、代替案を提示しながら対話を継続することが、信頼形成と現実的な解決策につながるという指摘には、多くの参加者がうなずいていました。
さらに、合理的配慮が個別対応である一方で、日常的なルール整備や設備対応といった環境整備の重要性も提示され、制度と文化の両輪で取り組む必要性が強調されました。
■ NTTドコモの取り組み:バリアフリーを価値創造へ
事例紹介では、NTTドコモの福田課長より、長年にわたり推進されてきた「ドコモ・ハーティスタイル」が紹介されました。
製品開発(らくらくホン)や店舗サポート、手話対応、特別支援学校との連携に加え、遠隔触覚技術を用いたインクルーシブな音楽体験など、アクセシビリティを事業価値に転換していく先進的な試みが共有されました。
バリアフリーを「コスト」ではなく、「社会価値と企業価値の両立」として捉える姿勢は、まさに持続可能な経営そのものです。
■ 参加者との対話:実務のリアリティと共感
パネルディスカッションでは、私(小林)も登壇し、参加者の具体的な課題に対して議論を行いました。
障害 disclosure(開示)を本人が望まない場合の支援アプローチ
環境変化に弱い特性を持つ社員との業務設計
特性を補うだけでなく、強みを活かして成果につなげる観点
本人の困りごとと「許容できる範囲」を丁寧に探るプロセス
ここでも繰り返し浮かび上がったキーワードは、信頼・対話・伴走。
制度や運用も大切ですが、人と組織を信じて共創する姿勢なくしては前進できないことを改めて確認しました。
■ SCMとしての意義とこれから
今回のセミナーを通じ、バリアフリーは支援施策にとどまらず、多様性を源泉に組織能力を高めるテーマであることを再確認しました。
SCMとしては、今後もBFCフェローとして
インクルーシブ組織づくりの伴走支援
管理職向けDE&I/心理的安全性研修
実務に落とす制度設計と運用支援
に取り組んでまいります。
多様性が力に変わる組織、そして一人ひとりが強みで輝ける企業へ。
引き続き、挑戦と協働を重ねてまいります。