コラム・活動レポート

250926 UCサンディエゴの「アメリカ地政学プログラム」に参加

2025年12月23日 14:48

9月22~26日、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)のグローバル政策・戦略大学院(School of Global Policy and Strategy(UCSD GPS))が主催する「Geopolitical Insights and Analysis」プログラムに参加しました。 

本プログラムは、米国の外交・安全保障政策に精通した専門家、米海軍・政府関係者、シンクタンク研究者を講師陣とし、米中関係、インド太平洋戦略、米国政治、技術安全保障など、経営者にとって不可欠なテーマを体系的に学ぶものです。 

私は昨年、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院が実施する「アジア地政学プログラム」に参加しました。田村耕太郎氏が主宰するそのプログラムは、アジア地政学の中枢で生の議論に触れる貴重な機会であり、以後、世界とつながり続けながら経営を考える重要性を強く意識するようになりました。その延長線上で、今回は同氏が企画運営に携わるUCサンディエゴでのプログラムにも参加し、米国という“もう一つの最前線”で視座をさらに広げたいと考えました。 


 


 

■ 普段日本では得られない一次情報 

日本にいると、国際情勢の理解は報道を通じた“結果”の情報に偏りがちですが、今回のプログラムでは政策現場の視点に直接触れることができ、「なぜその政策が打たれるのか」を構造的に理解する機会となりました。 

特に、米国海軍関係者が語るインド太平洋の安全保障環境は圧巻でした。南シナ海・台湾海峡の海洋安全保障、航行の自由作戦、海洋通信線(シーレーン)防衛、サイバー・宇宙領域など、軍事のみならず経済インフラと直結するリスクが具体的に語られ、日本ではなかなか得られない緊張感とリアリティを感じました。ビジネスは“平時”を前提にして成り立つものですが、世界はすでに新しい局面にあり、その前提が揺らいでいることを実感しました。 


 

■ 米中関係と技術覇権の本質 

米中関係については、半導体やAI、量子、データ、エネルギーなど広範な分野での競争が構造化していること、その渦中で日本企業がいかに位置づけられるかという視点が示されました。 
「安全保障政策=産業政策=技術政策」という時代に入り、長期の視点での事業戦略が不可欠であること、また“どちらに付くか”ではなく“価値連携の軸をどう築くか”という発想が求められていることを強く感じました。 


 

■ 米国政治の内側と企業への示唆 

米国政治に関する講義では、二極化、ポピュリズム、移民政策、議会の機能不全といったテーマが取り上げられました。米国は安定した民主主義というイメージが強い一方、実際には変動と対立が深まっており、その政治環境が企業の規制環境・競争環境に直結しつつあることを理解しました。 
「政治が経済・技術の行方を決める」現代において、経営者が政治・社会の構造を理解する重要性を改めて痛感しました。 


 

■ 多様な仲間との出会いという財産 

本プログラムは、日本人ビジネスリーダー向けに企画されており、日本、シンガポール、ニューヨークなど世界各地から、経営者、投資家、投資銀行役員、スタートアップ経営者など多彩なバックグラウンドを持つ参加者が集まりました。 

座学だけでなく、企業視察なども組まれていることからメンバー同士の意見交換の機会も多く、視点の違いから刺激を受けるとともに、将来の日本と世界をつなぐ“同志”とのネットワークが形成できたことは大きな財産です。国際情勢を学ぶことは知識の習得ではなく、未来を問い続けるコミュニティに身を置くことの価値でもあると感じました。 



 

■ 今後に向けて 

今回の学びを踏まえ、今後は以下をさらに推進していきます。 

  • 地政学リスクと機会を可視化し、経営戦略に反映する支援 

  • 海外情報に継続的にアクセスするネットワークの深化 

  • 日本の経営者・次世代リーダーとともに国際視座を高める取り組み 

地政学は“遠い世界の話”ではなく、経営の前提条件であり、社会を動かす力学そのものです。今回得た知見とネットワークを、企業支援・社会価値創出に繋げてまいります。