コラム・活動レポート

251028 「跡取り娘のためのM&A基礎講座」を開催

2025年12月24日 10:30

一般社団法人 日本跡取り娘共育協会にて、「跡取り娘のためのM&A基礎講座」を開催しました。本講座は、家業を継ぐ女性=跡取り娘のために企画された実践的プログラムです。家業を引き継ぎ、次の世代につなぐ役割を担う彼女たちが、単に“受け継ぐ人”ではなく、未来の経営者として意思決定できる存在へと成長していくための、大切な学びの場となりました。 


講座には多くの跡取り娘が参加し、2回シリーズで、M&Aの基本から実務・倫理まで幅広く学びました。「自社をどう守るか」という視点だけでなく、「地域の承継課題に寄り添い、必要に応じて企業を受け継ぐ」という視点も併せ持つことが、これからのファミリービジネスにおいて非常に重要になる——その認識が、参加者の間で強く共有された時間でした。 

跡取り娘にとってM&Aが重要な理由 

跡取り娘たちは、スリーサークルモデルにおけるオーナーシップのサークルに立つ存在です。 
つまり、自社の株式、ガバナンス、そして長期的な企業価値の向上について、主体的に考える立場にあります。 


加えて、今の日本は深刻な後継者不足時代。他社が抱える承継課題を、共に未来を創る仲間として引き受けていく可能性もあります。 


多くの女性が経営参画し、地域企業と手を携えて永続的価値を生み出していく——そこにこそ、跡取り娘世代が持つ大きな使命と可能性があります。今回の講座は、その一歩を後押しする内容となりました。 

■講義内容:M&Aの本質から実務まで 

講座ではまず、「M&Aとは何か」という基礎からスタートし、株式譲渡・事業譲渡・資本提携などの手法の違い、M&Aの典型的なプロセス、そして企業価値の評価方法まで、体系的に学びました。

 

特に印象に残ったのは、“価値を見る眼”を育てることの重要性です。 
企業を買うという行為は、数字を読むだけでは不十分で、事業の本質、文化、人材、地域との関係性といった“目に見えない価値”を見抜く力が求められます。 


また、DCF法やマルチプル法などのバリュエーション手法も学び、参加者は「家業は“感覚”だけで語る時代ではない」という気づきを深めていました。 

■承継M&Aのリアルと倫理 

講座の後半では、事業承継M&Aの現場で起きている課題や、仲介会社との付き合い方、契約のチェックポイントなど、より実践的かつリアルなテーマに踏み込みました。 


市場拡大にともない過熱する営業や、両手仲介の利益相反構造、最低報酬設定の罠、情報弱者となりやすいファミリー企業経営者——こうした現実を知ることは、跡取り娘たちが健全な経営判断を行ううえで不可欠です。

 

そして何より、「数字や契約の前に、人と文化がある」という視点。 
M&Aはゴールではなくスタートであり、従業員・顧客・地域社会の幸福を守る経営こそ、ファミリービジネスの存在意義であることを再確認しました。 

■参加者の声:リテラシーと覚悟を得て 

講座の最後には、多くの深い気づきが共有されました。 


  • 「M&Aは非常にリテラシーが求められるもので、簡単に仲介会社に任せればよいものではないと痛感しました」 

  • 「オーナーが知識を持っていないと、専門知識を持つ人に流される危険性が高いという現実を知りました」 

  • 「家業を守るだけでなく、地域企業を支える側にもなれるという視点を得ました」 

  • 「数字や契約は冷たいものだと思っていたが、人を幸せにするための道具でもあると気づいた」 

  • 「これからは恐れずに経営の数字に向き合い、よりよい意思決定をしたい」 


跡取り娘たちが今、単に後を継ぐ存在ではなく、地域と未来を担う次世代経営者へと育ち始めています。 


当協会は、今後も学びを深化させ、互いに支え合いながら、女性が家業をつなぎ、発展させ、社会に価値を生み続ける未来をともにつくっていきます。