知っておきたい事業承継の基礎知識
2021-02-19
日本は世界に冠たる長寿企業大国であり、日本企業の97%はファミリービジネスです。
しかし近年、大塚家具やスルガ銀行などの報道の影響もあり、ファミリービジネスというと体制の脆さやガバナンス上の問題がクローズアップされがちです。
実はファミリービジネスには、迅速な意思決定、長期的視野に立った経営など、大きな強みがたくさんあります。その結果、非ファミリービジネスよりもファミリービジネスのほうが利益率も高く、離職率も低い、といった調査結果も出ています。
経営者自身も知らないファミリービジネスの強さと魅力をぜひしっかり押さえ、自社に誇りをもって、堂々と若い後継者が承継していけるよう、弊社ではマネジメント支援、後継者育成のためのコンサルティングなどを行っています。
ファミリービジネスを行う上で必ず課題となるのが「事業承継」です。今回はファミリービジネスの経営者なら知っておきたい、事業承継の基礎知識をお伝えします。
事業承継は3つの承継を同時に考える!
ファミリービジネスの経営者は、ビジネス、ファミリー、オーナーシップの3つの側面(スリーサークルモデル)を総合的に考えてマネジメントを行う必要があります。
ビジネス面では、いかに事業を発展させ会社を成長させていくか。ファミリー面では、家族でいかに団結し、後継者の育成を含めて会社を守っていくか。オーナーシップ面では、株をいかに引き継いでいくか。この3点です。
上場企業や大企業はビジネス面だけを考えていればよいのですが、ファミリービジネスの場合、この3つを総合的に見て初めて成り立ちます。経営者自身でこれらを全てマネジメントすることは難しく、事業承継に際してアドバイザーやコンサルタントへ依頼するケースも増えています。
世の中に事業承継のアドバイザーやコンサルタントは数多くいますが、ファミリービジネスの3つの課題を総合的に理解した上でアドバイスできているとは限りません。一般的に、中小企業診断士はビジネス面に偏りやすく、税理士はオーナーシップ面で自社株をどうするかという点に偏りがちです。経営者の抱える要素の一部分だけを見たアドバイスでは、総合的な課題の解決にはなりません。
ファミリービジネスの事業承継に必要なのは、複雑に絡み合った要素に対して総合的なアドバイスができるコンサルタントです。弊社では複数の専門家がチームを組み、経営者の抱える問題をあらゆる側面からサポートします。
・事業承継にかかる期間はどのくらい?
株の承継だけであれば1〜2年で済みますが、経営を承継するには、後継者が入社してから社長になるまで15年〜20年をかけて行います。社長が交代して終わりではなく、承継後も先代が新社長をサポートしながら並走する期間が必要です。
・事業承継を考え始めるべきタイミングは?
事業承継を家族で話し合うことに抵抗を感じる方は少なくありません。「まだまだ元気だから引退は考えていない」「父親の死と向き合いたくない」などの理由から、なかなか真剣に話し合う機会を持ちにくいのです。
しかし事業承継において最も問題となるのは、考え始めるタイミングが遅いことです。
先述した通り、事業承継には15年以上の長い期間がかかります。65歳で「まだ元気だから」と事業承継を考えずにいて、いざ80歳になってから始めるのでは遅すぎるのです。
事業承継を成功させるためには、経営者が「まだまだやれる」と思っている50歳くらい、後継者である子が大学を卒業した頃から考えておくべきです。しかし実情はそうなっておらず、社長が高齢化するうちに後継者がいなくなってしまうという切実な問題が起きています。
・経営者が高齢化することによる悪循環
経営者がいつまでも会社を手放そうとしないでいると、さまざまな悪循環が生まれます。
経営者と社員が高齢化すれば、保守的になってビジネスモデルも古くなります。時代に取り残された魅力のない企業になってしまうと、若手社員が入って来ず、後継者からも敬遠されます。
事業承継がうまくいっている会社では、新社長が30代で就任しているところも多数あります。若く元気な社長のもとでは会社も勢いが出るので、新しいことに挑戦してビジネスも発展します。
会社をいきいきと存続させていくためには、まだ余裕のある早い段階から、若い後継者に事業承継することが理想です。その後は、先代は見守り役にまわり、新社長と幹部の三位一体で会社を経営していくのです。
・事業承継で留意すべきポイント
事業承継で大切なのは、「変えるもの」と「変えずにずっと続けていくもの」をきちんと理解した上で経営を続けていくことです。
よくありがちなのが、新社長になると先代が手がけてきたことが古臭く見えて、既存のやり方を変えようとして失敗するケースです。これでは今まで長年貢献してくれていた社員との信頼関係が崩れてしまい、うまくいきません。
先代社長が培ってきた根幹を尊重しながら、時代に合わせて変えていくべきところは変えていく。この2つを見極めることが大切です。
・書籍「ほんとうの事業承継」出版記念セミナーのご案内
弊社代表の小林が執行役員を務めている日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)にて、「先代とアトツギが知っておきたい ほんとうの事業承継」という新刊が、生産性出版から2021年1月4日に発刊されました。
本書は、23名のプロのファミリービジネスアドバイザー、ファミリービジネス経営者、大学教授たちが執筆を担当しています。
税務、金融などのハードスキルからコーチング、セラピーなどのソフトスキルまで、多方面にわたる専門分野の執筆メンバーが、それぞれの経験に基づいた「ほんとうの事業承継」について、実務的で実践的な観点から解説したものです。
小林は、最後の261~270ページ、「第三者承継 第三者に経営を委ねることで事業と社員を守るM&A」というパートを執筆しました。
・譲渡側の経営者がM&Aで陥る苦い経験
・経営者にとってのアドバイザーの選び方
等について、これまで事業承継M&Aに携わった経営者からのヒアリングなどをもとに執筆させていただきました。
この度、本書の出版を記念して、FBAAでは全3回のオンラインセミナーを開催します。第1弾は大盛況のうちに終了し、現在、第2弾と第3弾の開催を予定しています。代表の小林は第3弾で登壇予定です。申し込みは下記リンクから承っております。ぜひお気軽にご参加ください。
「ほんとうの事業承継」出版記念セミナー(第2弾)
日時:2021年02月26日(金) 20:00~21:30 / オンライン(ZOOM)
内容:第2弾は、【第2章:承継すべきは「ファミリー資本」なぜ、ファミリー会議、家訓、家憲が必要なのか】について、担当した筆者のプレゼン+Q&A、意見交換を行います。
「ほんとうの事業承継」出版記念セミナー(第3弾)
日時:2021年03月12日(金) 20:00~21:30 / オンライン(ZOOM)
内容:第3弾は、【第5章:事業を円滑にする外部との上手なつきあい方「自社の強み」を最大限に活かすために大事なこと】について、担当した筆者のプレゼン+Q&A、意見交換を行います。弊社代表の小林が登壇します。
本サイトでは今後も、事業承継に役立つ情報を発信して参ります。事業承継でお悩みの方は、ソーシャルキャピタルマネジメントへお気軽にご相談ください。