人事担当者なら知っておきたいSDGs実践の具体策とは?

2021-11-02

既にご存じの方も多いと思いますが、SDGsとは「Sustainable Development Goals(継続可能な開発目標)」の略です。2030年までによりよい世界を目指すための国際目標であるSDGsは、2015年に国連で採択され、193カ国が協働して社会課題の解決を目指すため17のゴールが整理されました。SDGsは発展途上国のみならず、先進国が取り組むべき普遍的なものであり、多くの企業や教育機関が積極的に取り組んでいます。
しかし、SDGsへの「理解」は進んだものの、経営者や人事担当者からは「SDGsが社員に浸透している実感が持てない」「社員の自分事に結びついていない」といった声を多く耳にします。
SDGsを「絵にかいた餅」で終わらせないためにも、企業はどのようにSDGsに取り組んでいくべきなのか?今回は、当社小林へのインタビューの形でお送りしたいと思います。


 

SDGsを企業として取り組む意義について教えてください

SDGsを考える際に、SCR(企業の社会的責任)の観点からアプローチしている企業は少なくありません。しかし、SDGsの枠組みで本質的に求められているのは、本業と切り離れた社会的責任行動ではなく、「本業を通じて社会課題を解決する」ことです。

かつては、自社製品をいかに買ってもらうかを考える「プロダクトアウト」が中心だったビジネスシーンは、時代とともに顧客の課題解決を図る「マーケットイン思考」に移行しました。そして、その先には「社会が求めている潜在的ニーズ」をつくっていく、いわゆる「アウトサイドイン思考」が必要になってきます。企業がSDGsをビジネスと直結して考えていく上での最重要ポイントはここです。

つまり、企業がSDGsに取り組むことは「社会の要請を先取りして新しいビジネスをつくっていく」という新規事業開発や事業戦略に他ならないのです。そうした意味では、企業の経営理念の推進、経営理念に基づく行動実践、行動変革ということとSDGsの実践を結び付けて推進することが何よりも肝要といえるでしょう。


 

企業の採用・教育担当者はSDGsとどのように向き合えばよいですか?

企業の人事担当者は、採用、育成の他、社員のモチベーション、エンゲージメントのマネジメントからダイバーシティ&インクルージョンまで多岐にわたる業務を担当しています。言うまでもなく、それぞれの業務においてSDGsは大きく影響しますので、人事担当者が的確にSDGsを理解することは必須です。

まず、新卒採用を考えてみましょう。現在、中学・高校・大学などの教育機関において、様々なSDGsプログラムが取り入れられています。そのため、彼らが就職活動に臨んだ際には「この企業はどのようにSDGsに取り組んでいるのか?」「この会社に入社したらどのような社会貢献ができるのか?」ということに強い関心を示します。ですから、人事担当者として自社のSDGs戦略を十分に理解し、学生にわかりやすく説明できることが求められるのです。

次に、SDGsのゴール8には「働きがいも経済成長も」という文言があります。これは、人事担当者が担う「社員にとって働きがいのある職場を提供して生産性の高い業務を実現する」ということに直結しています。社員もモチベーションやエンゲージメントを十分意識し、高い水準で実現できるように様々な取り組みを行っていくことは、まさにSDGsのど真ん中なのです。

さらに、ダイバーシティ&インクルージョンの観点からSDGsを考えます。女性活躍支援や障がい者雇用の推進など、どのようなバックグラウンドを持っている社員でも、それぞれのスキルや能力を発揮できる環境を整えることは、企業の組織開発上の重要な要素です。

女性活躍推進、ジェンダー平等の推進は、SDGsのゴール5に掲げる「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」というものに直結します。たとえば、女性の役員・管理職登用の推進は、SDGsの取り組みそのものといえるでしょう。

日本企業のダイバーシティ経営については、世界のジェンダー指数で大きく後れを取っていることもあり、今後一層の取り組みが期待されています。

日本のSDGsゴールの達成度)


(赤が大きく遅れているところ、緑は十分達成できているところを示す。悪い順に、赤、オレンジ、黄色、緑となる。)

企業がSDGsを推進する際に注意するべきことは何ですか?

SDGsを企業として推進する際のポイントは大きく4つあります。
1つ目は、単なる取り組みではなく「企業理念の実践」を意識することです。「他社がSDGsに取り組んでいるからうちも何かやらなければ」というように、とりあえず何かをするという形では、社員にまったく浸透しません。大切なことは「なぜやるのか?」です。サイモン・シネックが提唱する「ゴールデンサークル理論」にもあるとおり、第一に「Why」を大事にしてもらいたいです。

2つ目は、全社員を巻き込んでいくプロセスと教育を実践することです。SDGsに関する認知度調査によれば、一般社員よりも役員・管理職の認知度が高いという結果が出ています。経営陣が「うちも取り組まないと」ということでSDGs推進室のような組織がつくられ、推進母体となることは珍しくありません。しかし、SDGsは特定の部署や経営陣だけで推進できるものではありません。SDGsを社員全員が意識し、社会課題解決のためにビジネスが成り立っているということを体感できることが理想です。

3つ目は、「既にできていること」を認めることです。問題解決を軸に考えていくと、企業は「うまくいっていないこと」に注目しがちです。しかし、従来SDGsと銘打っていなかっただけで、本質的にはSDGsの側面から十分に評価される取り組みが多く存在します。「できていること」にも目を向けた上で、2030年、2050年の社会を視野に入れて「もっと異次元でやりたいこと」を想像することが大切です。

4つ目は、「SDGsウォッシィング」を避けることです。実際にそうでないにも関わらず、広告などで環境に良いように思いこませる「グリーンウォッシュ」という言葉があります。海洋生物を守っているとアピールしながら、自社の東南アジア支社にいる従業員には低賃金で強制労働をさせるグローバル企業などがこれに該当します。

企業がSDGsの浸透と実践のために、具体的にどんな方法で行えばいいでしょうか?

「SDGsを推進する」という観点から3つのコンテンツを紹介しましょう。

<SDGsカードゲーム>
SDGsへの関心が高まる中、多様なカードゲームが開発されています。代表的なものにSDGsの本質を理解するのに効果的な「2030SDGs」、地方活性化・地方企業の地域課題を考える「SDGs de 地方創生」、事業を通じた社会課題解決をテーマに新規事業開発を考える「SDGs Outside In」などが挙げられます。

(例:エバラ食品工業「SDGs推進プロジェクト」)


<SDGsに関するワークショップ>
SDGsの理解を深めて実践するためには、勉強会や講演会でインプットを行うよりも、それを「自分事」として捉えることが大切です。そのため、企業でよく行われているのがSDGsに関するワークショップです。たとえば、「自社がこれまで行ってきた事業がSDGsの各ゴールとどのように結びついているのか?」について考えます。こうしたワークショップを通じて、自社の経営理念、ビジョンの意味を再認識し、「社会課題解決」をより前面に押し出した経営計画にまとめていく企業も多くみられます。

(例:ランドスケイプ「SDGsプロジェクト」ワークショップ)



<内定者・新入社員・インターン向け研修>
近年の社員研修の在り方は大きく変化しています。単なるビジネススキル研修はオンライン化が進む一方、コロナ禍でもリアルに社員が集まる意味は「その場で様々な考えを共有し、お互いに新しいアイデアを創発すること」にあります。たとえば「SDGsか掲げられる社会課題を解決するために当社のリソースをどのように活用できるか?」というようなテーマが、研修をデザインする上で非常に有意義です。入社前のインターンや内定者におけるグループディスカッションのテーマとしても最適といえるでしょう。

(例:キヤノンマーケティングジャパン 新入社員研修)



SDGsに対する取り組みは、当初の「まずは理解しよう」というステージから、2020年から「行動の10年(Decade of Action)」に入ってきました。
企業として、SDGsへの取り組みは待ったなしの状態であり、企業の競争力、市場や社会における評価としても不可欠のものとなっています。すぐに100%の成果を出すことは困難だとしても、何等かのアクションを取ってみることがまずは大事であり、次にいかに良いものにするためにトライ&エラーするかが大切でもあります。

ソーシャルキャピタルマネジメントでは、企業さま、教育機関さまなどのさまざまなSDGsへの取り組みについてご相談にあずかっております。何かご相談などございましたら、お気兼ねなく「お問合せ」フォームからご連絡ください。

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