240624 地域共生型ソーラーシェアリング事業の視察(さがみこファーム)

2024-06-24

2024年6月24日、神奈川県相模原市の相模湖近辺にて、ブルーベリー農園「さがみこベリーガーデン」と太陽光発電所を一体として一緒に展開(ソーラーシェアリング事業)している株式会社さがみこファームさまを訪問し、事業展開についてヒアリングをさせていただきました。

同社の代表取締役社長を務める山川勇一郎さんに丁寧なご説明をいただきました。

 

ソーラーシェアリング事業を始めるきっかけ

山川さんがソーラーシェアリング事業を展開するに至ったきっかけは東日本大震災にありました。ここで今まで気にしていなかった「コンセントの向こう側」に関心を持つべき、そうすると電源として原子力に依存するのではなくクリーンエネルギーを追求し、地域で発電し地域で消費する構造が重要なのではないかと考えるに至ったとのこと。

 

しかし、太陽光発電にはまた無秩序な山林開発で自然破壊が起きている事例も多く、新たな課題が出てきている中で、農地、特に耕作放棄地となっている農地を活用していくことに大きなポテンシャルがあるのではないか、と考えるに至ったとのことです。

地元の東京都多摩市には適した土地がなく、協力者を交えて検討した中で相模原市の山間部の土地に巡り合い、地主さんたちとも交渉を重ねた結果、さがみこベリーガーデンを開設するに至ります。2022 年にプレオープン、2023年に本格オープンとなりました。

 

 

農業を本気でやること

耕作放棄地を活用したソーラーシェアリングという話は他でもいくつもありますが、山川さんが一番重視したのは、これは本格的に行う農業である、ということ。太陽光発電で儲かるから農業は片手間でやればいい、ということではなく、農業としても単体でしっかり持続可能な状況を作ることに注力しました。

 

太陽光発電は設置した後の運用の手間はかからないので、キャッシュフローは生みますが、雇用は限定的です。未来志向の農業をやることで生産性も向上し、人を呼びこむことができる、それが関係人口を増やし、地域に賑わいを創出することになる、という考え方でした。

 

こうした「希望のある事業を創造する」ことを通じて、地域の地主さんにも賛同を得て、「地域共生型のソーラーシェアリング」として、事業を通じた地域課題解決と地域活性化を実現させる、そして「食×エネルギー×観光×教育」というかけあわせでシナジーを創出していく、というビジネスモデルを構築するに至ったとのことです。

 

 

太陽光発電

太陽光発電としては現在312kW(戸建て住宅約90世帯分)の電力を作り、供給しています。今後は地域の寄り添ってくれる地域外の企業と連携して、次の時代に合った太陽光発電所の開発を行っていく計画で、現在、生活クラブグループと2000kWの発電所開発準備を進めているとのことです。

 

未来志向のブルーベリー栽培

ポット養液栽培により、36種類、1,100本のブルーベリーを栽培しています。種類によって実がなる時期が異なるので、6~8月までいつでもおいしいブルーベリーを収穫することができます。

また、太陽光パネルが日陰をつくる役割を果たすため、最近の日本の夏の過度の高温、熱射の影響を緩和することができ、適切な栽培環境になっているとのことです。

また、収穫を行う農業従事者にとっても、炎天下で日陰のないところの作業ではないことから、快適な作業環境をつくることもできているとのことで、こうした面でも未来志向の農業ということもできます。

 

 

体験型農園

さがみこベリーガーデンは、会員制の仕組みとしており、会員がブルーベリー狩り体験をしたりする観光農園としての役割を果たしています。スポットで参加した人も年会員となって、長期にわたってベリーガーデンと関わり続けるファン作りという形にもなっているとのこと。

会員は、会員種別に応じて、生のブルーベリーや冷凍のブルーベリーが送られたりしています。

また、商品、加工品の開発も行っており、そこではB型就労支援事業所と連携するなと、農福連携の試みも行われています。

 

さらに、地域の災害時に非常用電源ステーションとして利用できるよう発電所の自立電源を開放し、地域に防災活動にも貢献しています。これにより地域の小中学校とのつながりが生まれ、教育プログラムの一環として社会科見学を受け入れたり、地域外の企業とも連携して地域の経済活性化や雇用創出にも貢献しています。

 

ブルーベリーからはちみつ、キウイ、ワイン用ぶどうへも展開拡大

さがみこベリーガーデンでは、ブルーベリーにとどまらず、はちみつも取れます。花の受粉を促進するため、さがみこベリーガーデンでは3年前から受粉用にミツバチを飼育し始めました。1年目はスズメバチに襲われて全滅しましたが、昨年は蜂箱を3箱維持することに成功しました。今年は蜂箱をさらに増やし、蜂蜜の収穫も順調で、現在までに140キロの蜂蜜を得ています。来園者にはブルーベリーの摘み取りと共にミツバチの飼育を見学する機会を提供しています。

 

 

さらに、今年から養蜂に興味がある人々を集めて部活動を立ち上げたり、はちみつの収穫イベントを開催。防護服を着用した参加者は、新鮮な採れたてはちみつを持ち帰ることができるとのことです。

 

さらに今後は、ワイン用ブドウの木を植えたほか、2025年以降にはブドウやキウイの栽培も開始していきます。それにより、秋から冬にかけても摘み取り、直売ができ、年間幅広い方々をお迎えできる体制にしていこうとチャレンジしています。

 

 

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視察を終えて

山川さんのチャレンジは、一つのアクションで多くの社会課題を同時に解決を図る方法であり、地元の方々や消費者など、さまざまな人を大事にして人に寄り添う姿勢をもとにビジネスを組み立てようとしている姿勢を強く感じました。

もうかればよい、ではなく、この事業に関わる人たち、周りにいる人たちをいかに幸せにするか、そこに焦点を置いているからこそ、多くの人に支持され、持続可能な事業として発展しているのだと思います。

このような機会を作っていただいたことに、改めて感謝いたします。

 

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